地の目が大切!
洗い張りや仕立て替えをお預かりして、着物を解いて見ると、表からは見えなかったことがいろいろと分かってきてとても興味深いです。着物の縫い方もそうですが、今日は生地の「地の目」についてちょっとだけ書きたいと思います。
反物で着物を誂えるとき、裁断したり縫い始める前に必ずしなければいけないことに「地直し」があります。
生地は織られる過程や保管状況によって、どうしても縦糸と横糸にゆがみが出てきます。この歪みを、湯を通したり(湯通し)生地を特別な機械で蒸気をかけ(湯のし)、または和裁士さんがアイロンをかけたりして直し、縦糸と横糸が直角に交差するように整えます。これを「地の目を通す」と言います。
また、ハサミを入れるときは生地の目を意識しながら裁断します。
着物の裾、袖下はもちろん、八掛け胴裏も地の目に沿って裁断します。
地の目に沿って作られた着物は、生地がヨレず、着物全体のシルエットが美しく、着姿まで美しく感じます。和裁の良し悪しはこういう細かい手間が現れ、仕立物を出す先によって、なんとなく出来上がりが違うと感じる原因になります。
地の目を無視して作られた着物は年を経るに従って、寸法が狂ってきたり、畳んでも左右対称にならなかったりいろいろと不都合が出てきて、解いて見ると案の定、地の目が通ってなかったりします。
きちっとした和裁所で修行した人なら、この辺のことは口を酸っぱくして言われてると思うので安心ですが、とにかく着物の形にすれば良い、というところもあるようなので注意が必要です。
専門店は寸法やお仕立て厳しいお客様が多く、若い頃からいろいろ勉強させて頂きましたが、最近は和裁の良し悪しよりお値段を気にする方が増えてきたように思います。隠れた仕立ての気遣いを評価していただけないのは残念ですが、そこは時代遅れと言われても呉服店の矜持として保ち続けたいと思っております。