本物志向、字幕と着物
先日、映画字幕でお馴染み戸田奈津子さんの
講演会に行ってまいりました。
映画好きな私としては一言一言を
聞き漏らさないよう前列でかぶりつき。
興味深いお話を楽しく拝聴して参りました。
皆さんは、先進国で字幕で映画が
上映されているのは日本だけだってご存知でした?
例えば戸田さんと仲のいい
トム・クルーズのミッションインポッシブルは
それぞれの国の字幕で上映されていると思いますよね。
ところが
ほかの国は吹き替えで、パリではフランス語のトムが
ベルリンではドイツ語のトムが登場しているらしい。
各国字幕だと思っていたのでとてもびっくりしました。
日本人は昔からなるべくなら、
俳優の声で聴きたいという本物志向が
あるのだとおっしゃってました。
私も俳優の生の替えが聞ける字幕派です。
それも最近は崩れ始め、
今や字幕を読めない若い方が増えて
吹き替え7字幕3の割合だとお聞きし
またまたびっくり。
難しい漢字が読めないので
ひらがなで字幕を書くよう依頼されることも
あると披露されてました。
着物の世界も多分ネックは同じで
手間のかかった本物より
見栄えが変わらないなら化繊のプリントで
良いという人は増えています
(実は見栄えはまったく違う)
はっきり「コスパが悪い」と言う若い方もいるので、
おじさんとしては「あー、時代が変わった」
と思うより仕方ありません。
ただ最近は若い方でも
「ネットでは素材感がわからない」という方や
「ペラペラの化繊は娘に着せたくない」
という方も出てきているので
「まだまだ捨てたもんじゃあないかも」
とも思っています。
何事も一方に偏りすぎたときは、
必ず揺り戻しがあるものですが
一度糸の切れた技術や伝統はもとに戻すのは
ほとんど不可能なのが今一番気がかりなことです。